不妊症の夫婦

不妊症に苦しんでいる夫婦は、まず意識的にコミュニケーションを図る必要があります。

そうしなければ、夫婦間の信頼が薄れ、不妊の悪循環が生まれてしまいます。確かにお互いに気を遣っている状況では、中々話しかけられないものです。

しかしそれでも無理に対話しなければなりません。何故なら、妊活はコミュニケーションから始まるものだからです。

妊活の根本である「子どもが欲しい」という気持ちを共有するためには、コミュニケーションを通して確認するしかありません。

一般に男性はそれほど子を持つ願望を表に出しません。妻が夫の本音を聞き出せない状態で妊活を始めても、不安が解消されないのはこのためです。

まずは積極的に本音を語り合う関係を維持することが大切です。そして周囲の声も含めて、冷静に状況認識する必要があります。周りが子どものことに言及すると焦るものですが、夫婦の間でどのように他人に返答すべきか共有していれば、一々気をもむこともありません。

さて、子ども以外の話題については盛んに話し合える夫婦であっても、いざ子どものこととなると口を閉ざすカップルも少なくありません。

それは何故でしょうか。

例えば共働きの夫婦の場合、フルタイムで働くと、子どものことについて時間を割いて話し合うことはあまりありません。それは、自分が働いている環境下で、本当に子どもを欲しているのか分からなくなるからです。迷い続けて10年も経てば、出産適齢期を過ぎることもあります。そうなるとますますパートナーには相談できない状態に陥ります。そのまま迷い続けて生涯を終えれば問題ありませんが、途中で急に欲しくなることも珍しくありません。

その時、「普段から子どものことについて話し合っておけばよかった」と後悔するパターンは決して珍しくないのです。

よく見られるのは、パートナーが急に大病に罹患し、医師から子どもを諦めるように言われ、初めて自分の本音に気付くというパターンです。

妊活は夫婦で

不妊は夫婦にとって大きな悩みであることが多く、その解決のために多くの関係者が努力を重ねてきました。

しかし不妊については専門家だけでなく、妊活を続ける本人たちも適切なアプローチが必要になります。

5組に1組が不妊症に罹ると言われていますが、彼らの多くは不妊治療等で専門家のアドバイスを仰いでいます。

もちろんそのアドバイス通りに対処することも大切なのですが、そもそも不妊状態を本人たちがどのように受け止めるべきかというレベルに立ち返る必要があります。不妊の原因は決して女性のみにあるわけではありません。男性側が原因であることも多いのです。

WHOによれば、不妊の24%は、その原因が男性にあるということです。また男女共に原因を抱えていることもありますから、安易に自分を責めたり、パートナーを責めたりしないように心掛けましょう。不妊症に罹ると、そのストレスからどうしても相手を責めたくなってしまいます。

小競り合いが積み重なるとすれ違いが生じるようになり、コミュニケーションが儘ならなくなります。

それを避けるためには、医療機関のみならず、他の外部機関も利用されると良いでしょう。

例えば不妊症に悩む人たちをサポートするNGOも存在します。彼らは多くの事例、経験を活かして適切なアドバイスを与えてくれます。

例を挙げましょう。ある不妊症支援団体はこう語ります、「身近な存在だからこそ話せないのだ」と。この知見は非常に心に刺さります。確かに我々は、不妊症のカップルが悩んでいると、その悩みを夫婦で分かち合っていることを前提に対応してしまいます。しかし実際はそうではないのかもしれません。夫婦と言えども、話したいことが話せない状態のまま苦しんで居るのです。一方が相手の本音を聞き出したくて話しかけてみても、相手は心を閉ざしたまま何も話さない可能性があります。仮に「大丈夫だ」と返答されても、それが事実かどうかを判断する術もありません。

夫婦とはそれくらい難しいものなのです。

不妊の原因が女性にあるケース

不妊の原因は様々ですが、女性に原因がある場合、どのようなケースが考えられるのでしょうか。

医学的には5つの原因が考えられます。

1つは排卵因子です。卵巣機能に何らかの問題があるケースで、卵子が上手く育たないこともあります。

2つ目は卵管因子です。クラミジア感染症に起因することが多く、卵管の詰まりが受精を妨げてしまいます。

3つ目は子宮因子です。子宮筋腫等に罹ると、着床に至らないことがあります。

4つ目は頸管因子です。子宮の粘液が不足すると、受精に障害が生じます。

5つ目は免疫因子です。免疫反応が受精を妨げるものです。

以上の5つ以外にも考えられる原因は存在しますが、いずれにしても医療の専門家の判断を尊重し、原因に応じた不妊治療を選択することが求められます。

世間では結婚、出産の適齢期を巡って様々な議論が交わされていますが、医療関係者としてはっきり言えるのは、出産計画も不妊治療も、出来る限り早く始めるのが重要だということです。加齢は婦人科疾患だけでなく、内科疾患のリスクも高めます。

つまり不妊治療を始めようと決意しても、全く関係のない病気を治すことを優先しなければならない状況に陥らないとも限りません。

中年の方であれば、婦人科だけでなく、日頃から内科関連の病気に罹患していないかどうか、気を配る必要があります。

また生活習慣も改善した方が良いでしょう。例えば喫煙は出産計画に負の影響を与えます。

喫煙は卵巣機能を低下させますし、子宮全体の健康状態を悪化させるのです。

出産計画期間はもちろんのこと、若い時分に禁煙するなどの努力が推奨されます。

不妊治療に纏わる誤解

不妊治療を巡っては、様々な誤解が見受けられます。

不妊に悩んでいる当人や関係者だけでなく、社会全体で誤解を無くすようにきちんと学ぶ必要があります。

誤解の極端な例としては、「不妊治療で卵巣が若返る」といった酷いものが挙げられます。

先進医療であろうと、加齢を止めたり戻したりすることは不可能です。卵巣は必ず老化しますから、閉経していなくても、30歳を越えると確実に妊娠可能性が低下します。また高齢になると、妊娠しても流産する恐れがあります。まずはその現実をきちんと認識することが大切です。

出産を計画している方は不妊検査を受けることもあるでしょうが、この不妊検査についても実しやかな噂が聞かれます。

例えば、不妊検査で問題が発見されなければ間違いなく妊娠に至ると考えている人もいますが、それも誤解です。

医学的に健康だと診断される人でも、自然妊娠する可能性は3割に過ぎません。また、ピルの服用に関する誤解も見られます。よく目にするのが、ピルを服用すると、癌に罹ったり不妊症になったりするというものです。しかしこの認識は全くの誤りです。確かにピルが完全に安全なものだとは言えません。

元々ピルが日本に導入された頃、ピルの安全性は疑問視されていました。しかし導入に伴う安全検査も厳格化され、今では出回っているピルに発癌性があると考える人は少ないようです。最終的には自己責任ではありますが、必要以上に怖がる必要は無いように思います。

では不妊症との関係性についてはどうでしょうか。欧米ではピルは非常に身近な薬として認識されており、服用率も高い水準で推移しています。

従って、不妊症についても怖がる必要はありません。それどころか、不妊症の改善のためにピルを服用することさえあります。

ピルを呑むと生理不順の改善が期待できるのです。ピルは基本的には安全な薬だと認識して頂いて構いません。但し医師の診断と処方は必要です。

それでも簡単な問診と血圧検査くらいですから、躊躇わずに病院の門を叩いてみましょう。

ピルを求める方の年齢層も幅広いのが実情ですから、恥ずかしがることはありません。

不妊に悩む人へ

最近は晩婚化が一段と進み、必然的に出産を計画する人の年齢が高くなっています。

高齢になるほど妊娠可能性は低くなりますから、不妊に悩む人も増えていると推測されます。

医療関係者の視点で申し上げると、不妊が続いても悲観する必要はありません。

生殖補助医療と呼ばれる分野の進歩は目覚ましく、不妊から解放される可能性も残されているからです。

因みに医療における「不妊」とは、「1年以上の性生活で妊娠できない状態」を言います。

不妊の原因は色々ありますが、専門家の判断を仰ぎ、正しい治療を試みることが大切です。

ところで加齢は何故妊娠にとって大敵なのでしょうか。

実は卵子と精子は加齢で劣化することが知られています。卵子は初めから数が決まっており、加齢とともに減少しますし、精子も精巣機能の弱まりで劣化します。従って、出産を計画する場合、若い時分に行った方が無難なのです。

具体的には30歳、35歳の壁がポイントとなります。

30歳を越えると下り坂に入り、35歳を越えるとその勾配が急になります。卵子や精子の質が低下すると、不妊治療の効果も下がりますから、医療に期待し過ぎるのも禁物です。万一不妊に陥ったら、まずは夫婦で相談しながら対応することが大切です。

その際、どちらか一方に原因すると決め付けてしまうのは危険です。よく見られるのは、精子が出ているから夫が原因ではないという誤解です。

前述したように精子も加齢で劣化しますし、数も減少します。また勃起不全等の性機能障害も不妊に繋がります。

では不妊治療はどのような手順で始めればよいのでしょうか。

医療関係者が原因を探ってくれますから、先ずはその原因に応じた治療法を選択します。

治療法は失敗するたびに、別の方法に切り替えることになります。